わずかな違いで遊ぶ

皆さんはどれを選びますか？

 

様々な仕様が存在するオーダースーツのディテール。
それは用途や目的、流行によって追加されてきたもので、一つ一つの違いを理解しトータル的にバランスを整えることで「やりすぎない」意味のあるオーダースーツとなるのです。
気分や使用用途、個人的な流行などを踏まえ考えてみましょう。

オーダースーツのデザインを決める際まず初めにお聞きすることは・・・

【フロントのボタンの数】

先ずは大まかにシングル又はダブルです。

シングルは”打ち合い”の幅が狭くフロントのボタンが縦一列に配されたものでスッキリとした見た目になり、ダブルはシングルとは対照的に”打ち合い”の巾が広くフロントのボタンが縦二列に配され、重なりが深いため保温性や防風性に優れたデザインです。
また、軍服からインスピレーションを得たデザインとされ重厚感ある見た目の印象です。

次にボタンの配置と数について。
フロントボタンをどの位置にいくつ付けるかで着心地や印象、見栄えも大きく変わります。
今時の流れや用途との相性も含め決めていくことが大切なのですがシングルでは通常次の２つのデザインから選択していただいております。
シングルブレステッドは通常一つボタン一つ掛け以外では一番下のボタンは閉じません。フロントカット（ジャケットの裾の広がり）をカーブさせ流している為一番下のボタンを留めると不要なシワがでたりシルエットが崩れ着心地にも影響してくるからなのです。
その窮屈な姿・見苦しいシワが相手にとって失礼になるとの配慮をもって、座るときにはすべてのボタンを外すというのが世界各国共通するルールでもあるのです。

なのですがここ日本では逆に非礼だと思っている方が多く、座った時のフィット感に併せ、ルーズなシルエットが正解だとされてきているというのが現状なのです。
知ったからには少しづつ変えて行きましょう！

 

① 2×1 (シングル2つボタン上1つ掛け)

 

ゆったりとしているイメージが強い2つボタンですが、よく太った方向けや胸板の厚い方向けとのイメージがありますが決してそんなことはなく細身でシャープなスーツを好みとするお客様にも人気の形です。
またボタンも装飾の一つとされることから、ボタンの数が少ないほどフォーマルとされタキシードは1つボタン・喪服や礼服にいたっては2つボタンとフォーマル度合いによってボタンの数を変えるという事も良くあります。

② 3×1 (シングル3つボタン中1つ掛け段返り)

 

ラペルロールが第一ボタンの位置よりも下にあり、第一ボタンのボタンホールがラペルロールに重なるデザインです。
IVY世代、アメリカンタイプのジャケット・スーツやクラシックなイタリアスーツによくみられる仕様で、Vゾーンの広さでは2つボタンとそれほど変わらない位置で設定していますので見栄え的にはそれほど変わらないと言えそうです。
単品ジャケットやスポーティーなスーツ等2つボタンタイプに比べ少しカジュアル的要素を加えた感じと言ってもいいかもしれません。

③ 6×2 (ダブル6ボタン下2つ掛け)

 

フロントボタンが上下左右に6つ付き、第二ボタンと第三ボタンを留めるタイプで、「Y字型」にボタンを配置されているのが特徴です。
腰の位置を少し上に設定してあるので全体的にシャープで体格の良い方をスリムに、そうでない方も胸元のボリュームも強調する効果もあります。シングルと比べかしこまった印象になりますので2～3着目以降にお選びいただくと着こなしの巾が広がるのかと思います。

④ 4×2 (ダブル4ボタン下2つ掛け)、4×1 (ダブル4ボタン下1つ掛け)

 

フロントボタンが上下左右に4つ付きすべて止める4×2、下のみ止める4×1で「V字型又は一直線」にボタンを配したものになります。
4×2は60～70年代にかけよく見られたデザインでダブルの中でも少しカジュアル風なデザインともいえるでしょう。
対して4×1 は80年代イタリアのデザイナーものによくみられるルーズシルエットのソフトスーツでブームとなり、Vゾーンを広くとれるという事から背を高く見せる効果があるとかないとかで小柄な方向きともされていました。かのウインザー公も積極的に採用していたとか。

 

長くなってきましたのでここまでで終わりますが、ここに書いてあることは絶対的なものではありません。
お客様の体形や好みによってボタンの配置や位置を変化させ、印象を変えたりすることも多々あります。また流行的なことも考慮して細かな調整を施してあります。
基本的なことを知ることで皆様のオーダーライフがより楽しいものになるよう、沼にはまっていただけるよう少し細かく説明させていただきました。
続編は書こうと思いますが、気を長くしてお待ちください！きっと公開しますので！